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エピローグ
裕二たちは茂と由紀の眠る墓の前に立っていた。
「ここで寝てるの?」
遥は無邪気な笑顔で裕二に投げかけた。
「そうだよ」
そう言うと、手に持った線香を墓の前に供え手を合わせた。
墓場の南には大きな桜の木があり、早いものはもういくつか花が咲いていた。
春一番と思わしき一陣の風が三人の間を吹き抜け、遥に被せていた帽子がフワリと飛んだ。
「まてー」
遥はそう叫ぶと飛んでいった帽子めがけて駆け出した。
裕二は今のこの幸せな光景を茂と由紀に見て欲しかった。
「いつもニコニコ、笑顔でソワカ、、か、、、。」
今の裕二ならその言葉の意味が理解できると思った。
そして、いつかどこかで読んだことがある言葉を思い出していた。
世の中がどんなに変化しても、人生は家族で始まり、家族で終わることに変わりはない。
たしか、こんな言葉だった。
日差しの暖かい春の日だった。