草花が少しづつ芽吹き始めた初春、ずっと会いたかった御仁にやっと逢うが出来た。
ヴァイオリン奏者、松本一策さんである。
じつはtwitterを通じて知り合い、ちょくちょく絡むようになって分かったことだが、小生と同い年であり、大学は長野県内に履修し、今は子育てをしながら音楽活動をする。
という経歴から、とても他人とは思えないシンパシーを勝手に感じまくっていたのである。
今回は我儘を言い、なんと自宅スタジオにて対談をさせていただくというなんともありがたい運びとなった。
松本一策さんに聞いてみた
今日はよろしくお願いいたします!!
バイオリニストとして活動していらっしゃるわけですが、今までの略歴を簡単に教えていただけますか?
四歳から習い事としてバイオリンを始めました。 中学位までは普通にやってたんですけど、普通の子供のようにゲームに興味が湧いたり、単純に孤独な練習が嫌になって辞めたんです。
そうだったんですね。 でもどうしてまたバイオリンを再開したんですか??
高校の頃は物理が好きだったので、そのまま物理系の大学の理学部に進学したんです。 そこで有志でやっているオケに誘われて、せっかくバイオリンの経験もあるし軽い気持ちで始めたのが再開のきっかけです。
なるほど。 そこからプロになるまでの経緯はどんな感じだったのですか?
大学三年くらいで進路を考えたんですけど、もうそのころには物理がつまらなくなってきてしまって(笑) 時を同じくしてバイオリンのほうがまた楽しくなってきたので、そのころにプロになろうと思い始めました。
いえ、実は物理の大学卒業後に名古屋の芸大に入学したんですよ。 なので合計8年大学に通いました。
そういうスタンスもあるんですね、すごい。 じゃあ芸大で4年学んでからそのままオーケストラに入った感じなんですか?
そうですね。 名古屋にも色々とプロオケがありまして、そのうちの一つに入りました。
オーケストラ関係の仕事の話とかって一般的な視点で見るとどういう仕組みで成り立ってるか分からないんですが、実際はどういう雇用形態とかなんですか?
オケにもよりますが、大体はサラリーをもらって仕事として演奏をするようなスタイルが一般的ですね。 なので、普通のサラリーマンのように有給があったりもするんです。
ほええ、そうなんですか。 ちなみに一策さんはプロオケでどれくらい貰っていたのですか??
うーん、大体当時は月10万~15万円位だったと思います。 ただやっぱりそれだけだと厳しいので、個人でも稼げるような仕組みを少しづつ作った結果が今に繋がってるような感じですね。
なるほど。 具体的にはどのようなことをやったんですか?
個人向けのレッスンだったり、自主的なコンサートだったり、知人から頼まれる演奏会のビラやフライヤーを作ったりとか、、、。とにかく出来ることは何でもやる感じでいました(笑)
素晴らしいですね。 現在はそのオケも辞められて完全にフリーになったと認識してますが、オケを辞めた経緯は?
単純に自分で作り出す仕事量が増えたのが一つで、その結果としてオケに所属してるのが不自由に感じてきてしまって。 やっぱりどこかに所属してる分、その辺は仕方なかったです。 大手を振ってやりたいようにはできなくて。
そうだったんですね。 その辺は一般的な会社員でも同じなのかもしれないですね。
そういうしがらみとか含め、色々考えまくってたら本当に強いストレスを感じてしまって、体調を崩したりして。 もうそんななら「やめちゃえ!」みたいになりました(笑)
音楽 × 子育てについて聞いてみた
そうですね、当時所属していたオケの先輩と後輩です(笑)。
僕がオケを辞めた後しばらくして妻も辞めたんです。 それからは二人で完全に独立して活動しています。
素敵ですね。 保育園と小学生のお子様も育てながらということですが、生活面で工夫されていることとかありますか?
二人ともレッスンをやるし、それぞれで仕事を請けたりもするので、シフトみたいのを定期的に作って回しています。 「この時間は僕が外で仕事だから妻が家事」とか、「この日は妻が一日レッスンだから僕が子供の送り迎えする」みたいな感じです。
めっちゃ仕事感ありますね(笑) いつも通りの一日ってどんな感じですか?
朝ごはん作る係は僕なので、朝6~7時くらいに起きます。 で子供の送迎とか色々やって、大体9時から15時くらいは自由な時間が出来るので、録音やら打ち合わせやらレッスンを入れたりします。 子供が帰ってくるととりあえず仕事はできないので、16時から子供が寝る21時くらいは育児してます。 そのあと深い時間からの演奏の仕事に出たり、他の仕事してる感じですね。
僕も保育園の子供いるのでマジで生活感似てます(笑) 夫婦でフリーだとどういう点がメリットだと思いますか?
うーん、シフトで動くのって案外うまく回ってるような気はしますね。 家事も育児もどちら任せでもないし、二人で取り組んでる感じはすごくあります。
確かにそうですね、効率も良さそうです。 仕事的な面だとどうですか?
演奏家二人だと正直効率的ではあると思います。 例えばレッスンも男の先生か女の先生かを選べるのもメリットですし、演奏とかの依頼でも性別を限定してお願いされる場合はどちらのカードも出せるので。
確かにそうですね。 二人で演奏するようなお仕事もあるんですか?
ありますね。 僕達を含むカルテットでの依頼も割と多いですね。 その際も一応四人のうち二人いるので収入には直結しますし、妻がバイオリン弾いて僕がヴィオラ弾くような時もあります。
ちなみにお二人でぶっちゃけ世帯所得は年間いくらくらいですか??(笑)
うーん、すみません、はっきりした数字はオフレコでお願いしたいんですが、二人でプロオケに所属してた時よりは遥かに収入はあります。
そうなんですね。素晴らしいですね。 DTMを使った録音の仕事も増えてますか?
そうですね、おかげさまで色々と機会が増えてきました。実績を公開できるのも少ないのですが、、、。
一策さんのようにプロオケとDTMとSNSをうまく使って認知されている人を僕は他に知らないので、DTM界隈では確実に「バイオリンと言えば一策さん!」みたいな印象ありますもんね。
日常について聞いてみた
DTM界隈だとやっぱりこおろぎさんとかですね。 バイオリニストは、、、、パッと思い浮かぶ人はいません。
音楽で自給自足ですかね、、、。 あと、自分の音楽作品をちゃんと作ってみたいです。
最後に聞いてみた
うーん、明確なものって無いんですよね。 とにかく目の前の事を一生懸命やるのが大前提というか。
それを続けてきたら、ありがたいことに今割とやりたいことやれてるなあって思うので、これからもあんまり変わらないと思います。
素晴らしいいですね。 では最後に、これから音楽でフリーランスを目指すような人に向けて何かあれば一言お願いします。
そうですね、、、。 今ってやっぱりひと昔前に比べたらだいぶ自由だと思うんです。やりたいことすぐやれちゃうような。 で、実際それやらないと何にも始まらないんですよね。 結局、自分が思ったようにしかなれないというか。
確かにそうですよね。 自分が望んだものにしかなれない。 って何かで読んだ気がします。
運とかも確かに重要だとは思うんだけど、とにかく失敗を恐れないで色々挑戦するべきかな、とは思います。 実際失敗とかって割とあるけど、巻き返せないようなことってあんまりなくて。 家族がいたとしても、自分だけで何とかなるような失敗なら全然大丈夫ですし。
ゴリラの編集後記
前情報から、小生の家庭環境にも似てる部分が多く、同い年というのも相まって会う前からすごく楽しみにしていたわけだが、実際に話してみるとその柔和な語り口と表裏一体となったクレバーな部分を垣間見ることが出来るハイブリッドなバイオリニストであったという印象を受けた。
話の合間に見せる家族への愛も、同じ所帯持ちの音楽家としては微笑ましさしかなかった。
一策さんは自身の事を「適当さ」と「神経質」の両極を持っていると仰っていたが、実はその両方はとても大事だと思っていて、かくいう小生も同じであったりする。
貪欲な追究や趣味の画にコミットする姿勢も、とにかく如実にそれが汲み取れるようで、良い意味で人間臭くて小気味いいのである。
事実、対談後の小生のイメージは
「こんなフランクなバイオリニストいるのか!最高かよ!」
である。
どうしたってオケマンはお堅いイメージはあるし、小生のような泥臭いバンドマン無勢から見ればセレブレティにもほどがあるのが世の常ではあるとおもうが、重ねた年齢関係なく自分のやりたいことに素直に取り組み、何より外に向けての「発信」がすごいのだ。
フリーである以上「認知される」というタスクは当然無視できないわけだが、こうして家族を守りながらもどんどん首を突っ込んでいく姿勢は脱帽して余りある。
今回は限られた時間の中でしか彼と話せなかったが、今度会うときはしっぽり語り明かしたいと願う。
似た境遇もさることながら、単純に他人とは思えない何かを感じたからだ。
松本一策【Issaku MATSUMOTO】
1980年12月13日生まれ。
名古屋市出身。2003年に信州大学理学部物理科学科を卒業後、愛知県立芸術大学へ進学。選抜のソリスト出演(協奏曲)や室内楽演奏会、卒業演奏会など数多く出演する。フランス音楽コンクールに入賞。卒業後は自主企画のコンサートをはじめ、レッスン、依頼演奏やアマチュアオーケストラの指導など、後進の育成にも力を入れている。
2006年から2014年9月まで一般社団法人セントラル愛知交響楽団に在籍。多治見のアンサンブル・セラ、愛知室内オーケストラや名古屋室内管弦楽団などの東海地区の若手プロオーケストラのゲストコンサートマスターとしての出演も多い。東日本大震災支援『Tsunamiヴァイオリン~千の音色でつなぐ絆~』プロジェクトに参加、TSUNAMI VIOLIN使用によるライブを行う。最近ではアイルランド民謡やジプシー、ジャズなどをレパートリーにした「悠情楽団」のセカンドフィドル奏者として活躍。2015年1月には名古屋ブルーノートに出演。即興演奏も多く取り入れ、ジャズの分野でも活動を広げている。またL’Arc〜en〜Cielなどのポップアーティストのツアーに参加するなど、クラシックに限らない演奏ジャンルの広さ・適応能力も強みとしている。最近ではNHK名古屋「さらさらサラダ」に出演。
アレンジにも定評があり、名古屋フィルハーモニー交響楽団やセントラル愛知交響楽団の依頼から小さなアンサンブルまで幅広く編曲。これからの活動が期待される名古屋発のヴァイオリニスト兼フィドラー。
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ヴァイオリンの録音を中心に活動しております。24時間レコーディング可能。リモートレコーディング、アレンジや宅録をしつつ自…
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